2014年6月12日

HeroQuest紹介(5) - アビリティ

●アビリティについて
キャラクター作成の次のステップはアビリティの選択です。 具体的なアビリティの選択方法を説明する前に、 まずアビリティとは何かについて説明したいと思います。

HeroQuest のキャラクターはアビリティ(ability:能力)の集合として表現されています。 一般的なRPG のキャラクターが 「能力値や技能値」 の集合で表されるのとよく似ています。 書式的にもアビリティの「名前」とそれに対応する「数値」からなっていて、 使用方法も一見すると似ているように見えるためアビリティを他のRPGの能力値や技能値と同じものだと思ってしまいがちです。 しかしながら根本の部分で大きな違いがあります。

一般的な RPG の能力値や技能値は「そのキャラクターが何ができるか」を示した値で、 シミュレーション的に客観的なキャラクターの性能を示しています。 HeroQuest ではシミュレーションは行わないためキャラクターの客観的な性能を示すデータは必要ありません。 そのキャラクターの出自やコンセプト的に可能なことは、 特に技能とかなくても可能と考えます。

一方で HeroQuest のアビリティは 「物語の中で問題解決や障害克服のために何をするか、 何故そうするのか」 を示したものです。 言うなればアビリティはキャラクターの主観的な性質を表しています。 普段から自らの剣の腕に頼るタイプのキャラクターならば 「剣術」 に関するアビリティを持っていますが、 「主君への忠誠」 を糧に問題に当たるキャラクターならばそのアビリティを、 困難に出会うと友人を頼るタイプのキャラクターならば友人に対する人間関係のアビリティを持っているといった具合です。


●アビリティの種類
HeroQuest のアビリティには事前に定められた一覧のようなものはありません。 キャラクターが問題解決や障害克服に使う可能性があるものならば何でもアビリティになりえます。 思いついたものは何でもアビリティにできるのでその種類は非常に多岐にわたります。 とりあえず以下はルールブックに載っている例そのままです。

肉体的性質:筋力、頑丈さ、鋭い視力
精神的性質:頭の回転が早い、記憶力、数学能力
性格:ユーモア、執念深い、決断力
肉体訓練:岩登り、フットボール、空手
知識分野:天文学、神学、写真技術
職業:武術師範、建築家、宇宙船操縦士
所有物:魔剣、巨大ロボ、防弾チョッキ
莫大な資産:信託、大農場、会社所有
文化背景:イヌイット、火星人、ルナーのホプライト兵
空想的パワー: 魔術、SF道具、ミュータント少女
非人間生態:ロボット、異星人、エルフ、トウロル
伝記的な事実: 無重力生まれ、アイビー・リーグの家柄、貧民街の習慣
縁故:部下、相棒、同盟者、知人、後援者

ほかにも行動原理とか動機とか口癖とか何でもアビリティになります。 実際ルールブックに載っているサンプルのキャラクターには 「触った物は何でもぶっ壊す」 とか 「馬鹿なやつが馬鹿なことをするのを止める」 というアビリティを持っているキャラクターもいます。

上記のアビリティの分類はあくまで参考のためでルール上で分類に意味があるわけではありません。 複数の分野にまたがるアビリティも一般的です。 例えば「元刑事」というアビリティならば実際の調査行為以外にも、 犯罪法規関連の知識としてや、 昔の警察仲間へコネなどとしても使えるでしょう。

当然ならが背景世界や前提条件に合わないアビリティは取れないので特殊なものはナレーターと相談する必要があります。 特に魔術のような空想的パワーや非人間とかの固有設定は世界ごとの追加ルールがある場合があります。 その他に縁故や人間関係に関しても専用のルールがあるのでルール上どのタイプになるかはナレーターに相談してください。


●良いアビリティとは
何でもアビリティになると言われると、 逆にアビリティを選ぶのが難しくなるものです。 ここで良いアビリティとは何かについて考えてみたいと思います。 究極的には面白い物語になり、 一緒に遊んでいる参加者が喜んでくれそうなものが良いアビリティです。

まずアビリティはキャラクターの描写の一部だと考えてそこから始めてください。 その意味でできるだけ多彩で想像力を刺激しキャラクターのイメージを伝えるものが良いアビリティです。 例えば単なる 「剣士」 よりも 「二刀流の剣士」 の方が良い描写ですし、 さらには「新月流の二刀剣士」とした方が戦い方や因縁などの物語を感じさせて良い感じになります。

直接的な能力そのものでなく、 それに関するセリフや道具をアビリティに選ぶ方法もあります。 「剣士」 というアビリティの代りに 「我は剣に生き剣に死す」 のようなセリフとか、 「父の形見の古ぼけた剣」 のようなアイテムとかを選ぶことにより、 全然違う物語を感じさせることできます。

ゲーム上はどれでも同じように働くかもしれませんが、 できるだけ良い物語を生み出すアビリティを考えてみててください。 どうしても難しいと思ったら最初は「剣士」とだけしておいて物語が進んで、どのような剣士か特徴や性格が判ってから、 アビリティの名前を変更することもできます。


●悪いアビリティとは
逆に程度を表す形容詞や副詞、 例えば 「凄い」 「腕の立つ」 「一番の」 などがついたアビリティは良くないものとされいます。 アビリティの活躍度合は、 そのアビリティつけられた数値によって決まります。 アビリティの名前を変えたからといってキャラクターが強くなったりはしません。 そのためアビリティの名前が単なる 「剣士」 でも 「負け知らずの剣士」 でも同じだけしか活躍できません。 それどころかアビリティの数値が低いと 「負け知らずの剣士」 なのに負けてばかいるということも起こりえます。

アビリティは 「客観的な性能」 ではなく 「主観的な性質」 なので 「負け知らずの戦士」 というのは要は自分が 「負け知らず」 と思い込んで問題に立ち向うといった感じになります。 自称 「負け知らずの剣士」 が負けても何の問題はないわけですが少しコミカルな感じになります。 そういう一風変ったキャラクターを遊ぶつもりでなければ、 程度を記述するのは避けるべきでしょう。


●広汎なアビリティと特化したアビリティ
もう一つ問題になりそうなのが 「広汎な」 アビリティと 「特化した」 アビリティです。 例えば単純で広汎な 「走る」 というアビリティと 「森の中を疾走する」 のような特化したものどちらが良いアビリティなのでしょうか?  一見すると適用範囲が広くどこでも使えそうな 「走る」 の方が有効なアビリティのように見えます。 でも HeroQuest では逆になります。

広汎とか特化とかはあくまで相対的なものです。 例えば 「森の中を疾走する」 とい名前のアビリティでも応用して平地や荒地でも普通に走ることができます。 「大木の根が張り出した森の中を駆け回っていた私にとってこの程度の荒地など問題にならない」 というわけです。 判定のところで再度説明すると思いますがアビリティは名前そのままだけでなく相当に応用が効くものと思ってもらって構いません。

さらには特化したアビリティであれば、 それにピッタリ一致する特別な状況においては 「特化アビリティー・ボーナス(Specific Ability Bonus)」 と呼ばれるボーナスをもらえます。 もちろんその逆で意図的にその特化がピンポイントで困難をもたらすこともありますが、 それも良い物語の種です。 広汎なアビリティは単純ではありますがボーナスをもらえる状況もありません。

このように特化したアビリティを取っても直接問題になることはない仕組みになっています。 できるだけ多彩なアビリティを選択するようにしてください。


●欠点
欠点(Flaw)は特殊なアビリティーで、 PCが不利になる方向にのみ使用できるものです。 通常はその値の1/5 が他のアビリティへのペナルティとして適用されます。 HeroQuest ではキャラクター作成の際に通常のアビリティに加えて最大3つまで欠点を無料で取得できます。

通常のRPGならば欠点を取ると見返りに何か有利な特性をもらえたりしますが、 HeroQuest では欠点を取ったからといって何かもらえるわけではありません。 なので欲しくなければ別に取らくても構わないのですが、 ナラティブとしては主人公に欠点を持たせることにより、 より人間臭い魅力的な人物にしたり、 主人公が失敗する理由を説明したりなどの良い面がたくさんあるので、 面白い欠点を思いついたら是非取得を考慮してみてください。

欠点も 「主観的な」 ものであることには注意してください。 周囲が困るものではなく自分が困るものが欠点です。 そのため不利にも有利にも両方に使えるものは欠点ではなく通常のアビリティ扱いなります。 例えば 「臆病」 といのは通常は欠点ですが、 臆病であることを理由にやりたくない仕事を断ったり、 他の登場人物に何かをさせるなど状況をコントロールした場合にはルール上の欠点として認められません。 ヒーローポイントを代価として支払って通常のアビリティ扱いに変更してください。


●キーワード
キーワード(keyword) とはアビリティのセット販売ようなものです。 「忍び足」 「錠開け」 「聞き耳」 「地下ギルド」のような個々のアビリティを取得する代りに 「盗賊」 というキーワードを一つ取ることにより代用するという手法です。

どのようなキーワードが使えるかとか、 キーワードを何個まで取得可能かは背景世界の設定やナレーターの準備状況によって異なりますのでナレーターに相談してください。 「職業」 「種族」 「出身文化」 「魔術/超能力」 などやその組み合わせがしばしばキーワードとして準備されます。 キーワードを取るだけで背景設定にあったキャラクターが作成できるお買い得セットというわけです。 キーワードにはアビリティーだけでなく欠点(Flaw)が含まれている場合もあります。

例えばグローランサならば 「ウーロクシの戦近侍(いくさきんじ)」 というキーワードを取るだけで、 そのキャラクターの立ち位置、 能力、 性格、 行動目的、 欠点などを一気に揃えられるだけでなく、 自動的に背景世界にマッチしたものになるというわです。


●キーワードの運用
キーワードの運用方法には以下のような三種類からの選択になっています。

自由キーワード: キーワードの名前と数値だけ決めて、 その中身のアビリティは決めずに関連しそうなもの全てにキーワードの値が使えるものとして遊びます。 成長させる場合にはキーワードの値を成長させます。 内部のアビリティは成長させられないので例えば 「錠開けの得意な盗賊」 のようなカスタマイズはできない欠点があります。

パッケージ型キーワード: 自由型とは逆にキーワードに含まれるアビリティを事前に全て決めておきます。 最初の作成の時にのみキーワードで取得し、 成長させる場合にはキーワードではなく個別のアビリティとして成長させます。 事前に詳細を決めておく必要があるので手間がかかるという欠点があります。

アンブレラ型キーワード: 上記二つの中間型で自由キーワードのようにキーワードごと成長させることができますが、 その中のアビリティを指定してパッケージ型のように個別成長も可能な方式です。 キャラクターシートに記述する場合はキーワードに数値を持たせておいて、 その中のアビリティを個別に成長させた場合には +1, +2 といったキーワードへの修正値で記録しておき、 それを使う場合にキーワードの値に足し算します。 アビリティが足し算表記になるので少し判り難いという欠点があります。

どの方式を使うかはナレーター次第ですが、 世界設定によってはアビリティ間の関連が強い魔術キーワードは一緒に成長させられるアンブレラ型、 関係が弱い出身文化キーワードは個別成長が必要なパッケージ型というように複数同時に使うこともできます。


《続く》
以上、 今回はアビリティとキーワードの説明でした。 次回はキャラクター作成のメインであるアビリティの取得方法と数値の決め方を説明します。

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