2015年11月7日

クトゥルフ・ウォーズ(Cthulhu Wars)の紹介

現在 Kickstarter でボードゲームのクトゥルフ・ウォーズ(Cthulhu Wars)の拡張第二弾 Onslaught Two の資金募集が行なわれています。 残り日数も少なくってきたようですが、 応援を兼てゲームの紹介を行ってみたいと思います。

Kickstarter: Cthulhu Wars : Onslaught Two

●コアゲームと拡張

クトゥルフ・ウォーズは基本となるコアゲーム(Core Game)と多数の拡張(Expansion)よりなっています。 コアゲームだけで完全な形で遊べるようになっており、各種の拡張は遊べる邪神の勢力やマップの追加や、 モンスターのヴァリエーションを増やしたりするためのものです。 今行なわれている Kickstarter では新しい拡張のセットが募集されているわけですが、 今回の紹介ではまずはコアゲーム部分を紹介しようかと思います。

Cthulhu Wars Core Game

いや、 実は拡張はまだ手元になくて紹介したくてもできないんです。 ものはできていて工場からの船便で旅をしているところみたいです。 拡張は機会があれば別途ということで。

●ゲーム概要

クトゥルフ・ウォーズはサンディー・ピーターセンがデザインしたボードゲームです。 彼はロールプレイグ・ゲームの「クトゥルフ神話RPG(Call of Cthulhu)」のデザイナーとしても有名ですし、 グローランサ関係でも重要なデザイナーです。 その後アナログゲーム業界を離れて、コンピューター・ゲームの業界で活躍していました(Doom とか Age of Empire とか聞いたことのあるかもしれません)。 そのサンディー・ピーターセンが一昨年アナログ・ゲーム界に戻ってきて発表した作品がこのゲームになります。

クトゥルフ・ウォーズは写真にあるような感じのミニチュア・フィギュアを使ったマルチプレイヤーのボードゲームです。 クトゥルフ神話を題材にしており、 各プレイヤーは邪神の勢力の一つを担当して互いに争いながら世界を滅ぼすことを目指します。 そして滅亡に最も貢献した勢力が勝利者になります。

●概観(見た目)

とにかく大きいです。 ちょっと比較写真を撮ってみましたがいかがでしょうか? 箱の大きさを数値で書くと 43cm×33cm×17cm で重さ 5kg くらいですかね。 正確に測ったわけではないので誤差はあるかもしれません。 遊ぶのにも少しだけ広めのテーブルが必要になります。 私の家では床に広げることになります。

大きさ比較
比較対象は2Lペットボトルです。

 ●フィギュア

このゲームの目玉は何といっても非常に良くできたフィギュアの数々です。 邪神の勢力ごとに色分けされており、 人間や小型モンスターは1インチ(25mm)スケールのそれですが、 旧支配者たちや大型モンスターは巨大サイズになっています。
信者たち

ロールプレイグゲームの 「クトゥルフ神話RPG(Call of Cthulhu)」 とかの小道具として使うのも面白いかもしれません。 いきなりこんなの出て来ても打つ手がないわけですが。
クトゥルフ(Cthulhu)

●マップ

写真にあるようにマップは世界地図になっていて、 勢力ごとに指定された地域からゲームが開始されます。 ゲームが進むと中国にビヤーキーが飛来したり、 北アメリカにクトゥルフが上陸したり、 アフリカにニャルラトテップが降臨したり、 世界各地で旧支配者やモンスターたちが暴れる世紀末(死語)な感じのゲームです。
4人ゲームの初期配置

●価格

コアゲームの定価は $199 で、アメリカの安いゲームショップだと実売 $170 くらいからのようです。 今行われている kickstarter では、数量限定ですが、$150 でコアゲームも入手可能になっているので、 この機会を利用すると良いかもしれません。 ただ注意すべきなのは最近国際運送の値段が非常に値上りしている点です。 上述したように大きくて重い商品なので追加で $50〜$100 の送料がかかるのではないかと思われます。

以下、 続きでは、ゲームの遊び方(ルール)を簡単に紹介したいと思います。

●ゲームの目的(勝利条件)

各プレイヤーは邪神の勢力を担当して、 自分の勢力は「呪文書」の封印を解くこと、 「ゲート(門)」を開き、 「全滅の祭儀」を行って世界を滅ぼすことを目指します。 全員が世界を滅ぼすという同じ目的を持っているのなら、 みんなで仲良く協力すればいいじゃないかとも思いますが、 旧支配者たちにとってそうはいかないようです。 まあ邪神たちが協力するようになってはおしまいですが。

そしてゲーム終了時に、 六つの「呪文書」全ての封印を解いたプレイヤーの中から世界を滅ぼすのに最も貢献したプレイヤーが勝利者になります。 ゲーム終了時に運悪く誰も「呪文書」六つを獲得していなければプレイヤー全員が敗北となり、 人類が勝利して生き延びることになります。

●得点方法

世界を滅ぼす貢献度は 「滅亡トラック(Doom track)」 で管理します。 ボードゲーム用語でいうなら、これが得点ボードになります。 誰かがこの滅亡トラックで30点以上になった時点でゲームが終了します。
滅亡(Doom)トラック

滅亡トラックで得点するには大きく三つの方法があります。

1つ目は異界へつながる 「ゲート(Gate)」 を支配することです。 毎ターン支配しているゲート1つにつき1点を獲得することができます。 ゲートは自分で作成してもいいですし、 他勢力のものを奪うこともできます。

ルルイエのゲート

2つ目は 「絶滅の祭儀(Rituals of Annihilation)」 を実行することです。 絶滅の祭儀トラックに示された魔力(Power)を支払うことにより、 その時に支配しているゲートの数だけ追加で得点できます。 あと多数の祭儀が実行された場合には、得点にかかわらずゲーム終了になります。

絶滅の祭儀トラック

3つ目は 「旧神の印(Elder Sign)」 トロフィーを入手することです。 この「枝」のような模様が「旧神の印」で、 有名なダーレスの五芒星の中に目があるやつではなく、 ラヴクラフト自身が書いたものを採用しているようです。 このチップの裏には1から3の数字が書かれていて、 いつでも公開して得点に変えることができます。 たいていはゲームの終盤まで隠していおいて逆点を狙います。 「旧神の印」は世界を滅ぼす邪魔になる気がするので、 これは各勢力が破壊した「旧神の印」の数を示しているのかもしれません。
旧神の印(Elder Sign)

●ターンシーケンス

ゲームの各ターンは以下のようなフェイズで成り立っています。

1. 魔力集積フェイズ
    - 魔力を集める
2. スタートプレイヤー決定フェイズ
    - そのターンのスタートプレイヤーを決める
    - そのターンが右回りか、左回りりかを決める
3. 滅亡フェイズ
   - ゲートの得点を得る
   - 絶滅の祭儀を実行する
4. 行動フェイズ
   - ゲートを作成する
   - 徴集、召喚、覚醒でユニットを登場させる
   - ユニットを移動させる
   - 敵の信者を捕虜にする
   - 戦闘を行う

以下、順番に説明していきます。

●魔力集積(Gather Power)フェイズ

最初のフェイズは魔力(Power)を集めます。 この集めた魔力がこのターンの行動力になります。 魔力はターンごとの使い切りで次のターンに持ち越すことはできません。 全員の魔力が無くなったら次のターンへ行くというルールなので当然といえば当然なのですが。

マップ上に登場している自分の信者ごとに1魔力、 自分が支配しているゲートごとに2魔力、 誰も支配していないゲートごとに1魔力を獲得します。 あと前のターンに捕虜にした敵の信者がいれば生贄に捧げて一人につき1魔力を獲得します。

魔力が一番多い人と比べて半分未満の魔力しか持っていなければ、弱者救済で多い人の半分まで魔力を増やすことができます。

●スタートプレイヤー決定フェイズ

最も魔力が多いプレイヤーがそのターンのスタートプレイヤーになります。 もし同点ならば前のターンのスタートプレイヤーが、そのうちの誰にするかを決定します。 最初のターンは全員同点なので「大いなるクトゥルフ」勢力を担当するプレイヤーがスタートプレイヤーになります。

スタートプレイヤーになった人は、 そのターンの行動順を自分から右回りとするか左回りとするかを決定します。

●滅亡(Doom)フェイズ

いわゆる得点フェイズで1回目のターンではスキップします。

各プレイヤーが支配している 「ゲート」 の数だけ滅亡トラックで得点します。

さらにスタートプレイヤーから順番に「滅亡の祭儀」を実行するかどうかを決めていき、 儀式を実行したプレイヤーは魔力を支払ってさらに支配している「ゲート」の数だけ得点し、 自勢力に旧支配者(Great Old Ones)を登場させていればその数だけ 「旧神の印」 も獲得できます。

この時点でゲーム終了条件(滅亡トラックまたは絶滅の祭儀トラック)が終了地点に到達していれば、 ゲームが終了になります。 以下の行動フェイズ中でも条件を満たせばただちにゲーム終了になります。

●行動(Action)フェイズ

これがメインのフェイズになります。 開始プレイヤーから順番に魔力を支払って1つづつ行動を実行していきます。 最後まで行ったらまたスタートプレイヤーに戻って行動を続けます。 魔力が残っていないプレイヤーの順番はとばされます。 そして全員の魔力が無くなったら、このターンが終了になります。

以下、 選択可能な行動について簡単に説明します。

・信者の勧誘(コスト1)

自分のユニットがいる場所に「信者(Cultists)」を1人登場させます。

・モンスターの召喚(コスト可変)

自分の支配している「ゲート」がある場所にモンスターを1体召喚します。

・旧支配者の覚醒(コスト可変)

旧支配者(Great Old One)を覚醒させ登場させます。 旧支配者の種類によっては魔力以外に特定の条件を満たす必要があります。

・ゲートの作成(コスト3)

自分の信者のいる場所に新しいゲートを開きます。 一つの地域には一つのゲートしか作成できません。

・移動(ユニットごとに1)

支払った魔力と同じ個数のユニットを隣接する地域へ移動することができます。 移動元や移動先はユニットごとにバラバラでも構いませんが、 1回の行動で同じユニットを2回移動させることはできません。 敵のいる地域へユニットを移動させることもできます。 同じ地域に移動しただけでは戦闘は開始されません。

・敵の信者を捕える(コスト1)

モンスターや旧支配者を使って同じ地域にいる敵の信者を捕虜にします。 同じ地域に敵のモンスターもいて信者を守っている場合にはこちらが旧支配者でなければ敵の信者を捕えることができません。 敵側に旧支配者がいる場合は信者を捕虜にすることはできません。

・戦闘(コスト1)

地域と敵勢力を指定して戦闘を行ないます。 呪文書を6つとも解放している場合、 戦闘は無制限行動になり、 自分の番に他の行動と合わせて何度でも戦闘を実行できます。 どの場合でも同じターンの行動フェイズ中には同一地域では各自1回しか戦闘を開始できません。

・ゲートの支配と放棄(コスト0)

空いているゲートに信者を乗せて支配したり、 信者を外してゲートを放棄したりするのは無制限行動なので自分の番ならばコストを支払わず好きな回数だけ実行できます。

・特殊行動(コスト可変)

呪文書などにより通常の行動のかわりに勢力独特の特殊な行動ができたり、 他人の行動に割り込んで行動できる場合があります。

●戦闘

戦闘なしに敵のいる地域に進出することはできますが、 ゲートを奪うには戦闘で敵の信者をゲートから追い出す必要があります。

各勢力の能力やモンスターや旧支配者の特殊能力などを別にすると戦闘の処理はとても単純です。

攻撃側と防御側が同時にそれぞれの戦闘力の合計数だけ6面サイコロを振ります。 6の目「殺害(Kill)」が出た数だけ敵のユニットが取り除かれ、 4と5の目「苦痛(Pain)」が出た数だけ敵のユニットを隣の地域に撤退させることができます。

どのユニットが死亡しどのユニットを撤退させるかはダメージを受けた側が決めることができます。 普通は弱いユニットから先に取り除くことになります。

●勢力ごと特殊能力

ここまでの部分だと、 単にサイコロを振って、 地域やゲートを奪いあうだけの戦略ウォーゲームですが、 このクトゥルフ・ウォーズの魅力は勢力ごとの特殊能力や呪文書の能力やモンスターたちの特殊能力の多彩さにあります。

コアゲームに付属しているのは以下の四つの勢力です。

大いなるクトゥルフ(Great Cthulhu): 「クトゥルフ」

這いよる混沌(Crawling Chaos): 「ニャルラトテップ」

黒山羊(Black Goat): 「シュブ=ニグラス」

黄色の印(Yellow Sign): 「黄衣の王」と「ハスター」

●「大いなるクトゥルフ」勢力

例として「大いなるクトゥルフ」勢力の能力について紹介してみます。

・スタート地点

この勢力は南太平洋に信者6人とゲートを配置して開始します。 (要はルルイエですね)

・勢力の固有能力: 不死(Immortal)

旧支配者クトゥルフを最初に覚醒(魔力10必要)して以後、 2回目からはたった魔力4で覚醒させることができるようになります。 (倒しても倒してもクトゥルフが復活してくるということですね。ガクブル)

・旧支配者

クトゥルフ(Cthulhu): 戦闘力6
  特殊能力: 摂食(Devour) … 戦闘前に敵の信者またはモンスターを1体食べることができます(戦闘力はそれほどではないですが、「摂食」は戦闘前なので反撃を受けずに敵が殺せる凶悪能力です)

・モンスター

深きものども(Deep One): コスト1、戦闘力1、4体
ショゴス(Shoggoth): コスト2、戦闘力2、2体
落とし仔(Starspan): コスト3、戦闘力3、2体
(オーソドックスで使い易い構成です)
「大いなるクトゥルフ」勢力のモンスターたち

・呪文書

勢力ごとに指示された特定の条件を1つ満たすごとに、 勢力の「呪文書」を1つ解放することができます。 「大いなるクトゥルフ」勢力ならば、 「戦闘で敵を殺す」とか「クトゥルフを覚醒させる」とか「海の地域にあるゲートを3つ以上支配する」とかで呪文書を獲得できます。
「大いなるクトゥルフ」勢力の呪文書

呪文書の能力はとても強力な上に呪文書を6つとも使えるようにすることが勝利条件の一部にもなっているので勝つためには絶対に必要になります。 クトゥルフ勢力の呪文書の能力は以下のようになっています。

・イハ・ンスレイ(Y'ha Nthlei)

クトゥルフが登場していると、 海の地域にあるゲート(支配していなくても良い)ごとに追加で魔力1を獲得する。 (魔力が増えます。地味だけど重要)

・退化(Devolve)

割込み行動として、 マップ上の任意の数の信者を同じ数の「深きものども」に置きかえることができる。  (はい。インスマス症候群が発症して戦闘力0の信者が、戦闘力1のモンスターに突然変わります。 ひどい)

・吸収(Absorb)

戦闘前にその地域の味方ユニットを取り除くと、 その戦闘でのショゴズ1体の戦闘力が取り除いた数につき3づつ上昇する。 (ショゴスに生贄を吸収させてパワーアップ、とても酷い)

・再生(Regenerate)

戦闘後のダメージ適用で「落とし仔」にダメージを2回分適用できるようになる。 それが2つとも殺害(Kill)でなければ「落とし仔」は死なず撤退するだけで良い。 (落とし子が再生能力を持ち戦闘のダメージを吸収してくれるで他のユニットも死ににくくなるとか。 とにかく酷い)

・夢(Dreams)

特殊行動(コスト3)で敵の信者のいる地域を1つを指定して敵信者のうち1人を味方の信者に取り換える。 (夢を送りつけて洗脳し味方にしてしまうということですね。 一見弱い感じの能力ですが、 ゲートのある地域に信者が一人しかいないと、 ゲートごと奪ってしまえるとても恐しい能力です。 勘弁して欲しい)

・潜水(Submerge)

特殊行動(コスト1)で大いなるクトゥルフおよび同じマス目にいる味方のユニットをマップから取り除くことができる。 その後に手番においてコスト1でマップ上の好きな場所に登場させることができる。 (将棋でいうならばいきなり盤上の飛車を取り上げて持駒にする一手、マップ上すべてがクトゥルフの攻撃に目標に。 ひど過ぎる)

クトゥルフ勢力の恐ろしさが伝わったでしょうか、 ぶっちゃけ他の勢力も負けず劣らずの凶悪な特殊能力を多数持っているのですが。

●マルチプレイヤー・ゲーム、 まとめに変えて

以上のような感じで、 クトゥルフ・ウォーズは各勢力がそれぞれ異なる目標と能力を持って合い争う感じのゲームです。 さらに拡張を追加すれば、 さらなる特殊能力を持った勢力やユニットが追加されたり、 条件の異ったマップで遊ぶことができます。

勢力ごとにユニットや能力が異なるので有利や不利があったり、 使い易いかったり扱い難くかったりしますし、 勝敗はダイスの目に左右されやすいなどありますが些細な問題です。 このゲームは何より「マルチプレイヤー・ゲーム」であることを忘れないでください。 一人で孤独に自分の勢力を育てるのが目的ではありませんし、それでは勝てません。

言葉巧みに同盟を結んで協力しましょう。 油断しているようならば裏切りましょう。 目立たないように勢力を拡張しましょう。 出る杭はみんなで力を合わせて叩きましょう。 可能な限り信頼し合いましょう。 騙されないように騙しましょう。 宇宙的恐怖に人間のモラルなんか関係あありません。

それでは良いゲームを。

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